特発性正常圧水頭症について

特発性正常圧水頭症について

認知症の患者さんは現在全国で250 万人近くに達しています。

そのうち5%程度が特発性正常圧水頭症によるものと言われています。

 

特発性正常圧水頭症とは?

人の脳や脊髄は柔らかく傷つきやすいため、固い骨に包まれています。脳はちょうど豆腐のような硬さで、頭蓋骨という固い器に水を張って浮かべられたような状態で存在しています。器の中の水のことを脳脊髄液(髄液)と呼んでいます。水頭症はこの髄液が頭蓋内腔に過剰に貯留した状態を言います。髄液は脳の中で産生され、脳や脊髄の周りを回って最終的に脳の表面から吸収される仕組みになっています。この髄液循環システムに異常が起こると髄液が過剰に貯留し水頭症を発症します。異常の原因として、クモ膜下出血や感染などにより髄液の吸収が障害されることや、脳腫瘍や血腫などにより髄液の通り道が塞がれてしまうといったことが挙げられます。この様に原因のはっきりした水頭症を続発性水頭症と言います。一方ではっきりした原因がないのに水頭症を起こす事があり、これを特発性正常圧水頭症と言います。

 

症 状

認知障害、歩行障害、尿失禁が3大症状です。歩行障害が最初に現れることが多く、他の認知症と見分けるためにも重要な症状です。 歩幅が狭くなり摺り足になったり、歩行が遅くなったりします。進行すると立ち上がる事も困難になります。認知障害は物忘れに始まり、次第に自発性が低下しぼんやりとして物事への関心を失ってしまいます。 尿失禁は3つの症状のうち最も遅く現れるとされます。

 

診 断

CT やMRI などの画像検査に加えて、腰に針を刺して髄液を30ml 程度抜いてみる試験( 髄液タップテスト ) を行います。髄液タップテストにより症状の改善がみられた場合は手術によって症状が改善する可能性が高いと判断し、手術が奨められます。

 

 

 

治 療

頭蓋内に過剰に貯まった髄液を身体の他の部分に流す手術( シャント術 ) によって治療します。いくつか方法がありますが、最も一般的な手術は脳室-腹腔シャント術です。頭蓋骨に小さな穴をあけて脳室から腹腔まで 細い管( カテーテル ) を通します。これによって頭蓋内の余分な髄液が腹腔内に流れていくことになります。また流れる髄液量を調節するための装置を頭皮の下においておきます。手術を行う事により6~8割の患者さんに3大症状の改善がみられています。

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