頭部打撲後の患者さんで、画像診断は正常でも受傷時やその後の記憶がない方をしばしば診察します。いわゆる脳振盪です。
脳振盪とは、頭部が何らかの衝撃を受けた際に発現する神経の機能的変化で意識消失、意識障害、記憶障害、けいれん等の症状が出現しますが、通常は後遺症なく回復します。しかし、スポーツ外傷等でたびたび頭部打撲を受ける場合、脳振盪を繰り返すことにより致命的な病態を引き起こすことがあります。このことを繰り返し損傷(second impact syndrome)といいます。スポーツで脳振盪を起こした場合、プレーへの復帰をいつ許可するかという問題があります。米国(American Academy of Neurology : AAN)では脳振盪を重症度分類しそれぞれの競技復帰時期についての目安が示されています。
脳振盪の重症度分類と競技復帰への目安(American Academy of Neurology : AAN)
グレード | 症状 | 最初 | 2回目以降 |
1 | 意識消失なし
意識混濁15分以下 |
退場させ無症状であれば当日の競技復帰を許可 | 当日復帰不可。
1週間無症状なら再開可能 |
2 | 意識消失なし
意識混濁15分以上 |
当日復帰不可。1週間無症状なら再開可能。 | 当日復帰不可。
2週間無症状なら再開可能 |
3 | 意識消失あり | 当日復帰不可 | 1ヶ月は復帰不可。 |
数秒 | 1週間無症状なら再開可能。 | ||
数分 | 2週間無症状なら再開可能。 |
意識がない選手にバケツで頭から水をかけてすぐに試合をさせていた時代は昔の話です。頭部打撲により一過性でも症状が出現したときは、専門医を受診することをお勧めします。