顔面けいれん

顔面けいれん

顔面けいれんは、顔の半分が自分の意思とは関係なくけいれんする疾患で、通常は目の周囲から始まりだんだん口元へと広がっていきます。中年以降の女性に多く、最初は疲れなどでまぶたのぴくぴくする症状との区別が困難ですが、進行すると顔半分の筋肉が収縮した状態となり、重症例では開眼も困難になることもあります。けいれんの持続時間も様々で軽症例は緊張したときなどに時々それも短時間おこる程度ですが、徐々にけいれんの時間が長くなり、やがて一日中、ときには寝ている間もおこるようになることがあります。原因は、顔面神経への蛇行屈曲した血管による圧迫と考えられています。

この疾患は生命にかかわるものではなく、放置しても差し支えないものです。しかし、顔が痙攣することで、接客や人前に出ることが精神的に苦痛になったり、片目が突然閉眼してしまい事故の原因となることもあります。したがって、患者さんが困って治療を希望する場合には何らかの治療を検討することになります。

 

治療

この病気に対する治療法は、薬物療法、ボツリヌス毒素療法、神経血管減圧術の3つです。

1)薬物療法:内服薬の効果は十分ではなく、副作用も少なくないことから、その適応は限定され、軽症の場合や、以下に述べるボツリヌス毒素療法や手術療法の禁忌や希望されない場合が適応とされます。

2)ボツリヌス毒素療法:対症療法であり根治療法ではありませんが、現在、第一選択の治療法として試みられています。ボツリヌス毒素を顔の筋肉に注射をすると、顔の筋肉が麻痺をして、痙攣がおこりにくくなります。外来で治療が可能で個人差はありますが効果は4ヶ月ほど持続します。量が多すぎると医原性の顔面神経麻痺になることがあります。

3)神経血管減圧術:唯一の根治療法ではありますが、ボツリヌス毒素療法が普及した今日においては、絶対的適応はなく、患者さんが他の治療法に満足できず、根治療法を希望される場合に考慮されます。手術は開頭顕微鏡下に顔面神経を圧迫している血管を剥離し、遊離させます。手術の合併症として、聴力消失2.6%、顔面神経麻痺0.9%、脳幹梗塞0.3%、死亡0.1%との報告があります。

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