脳動脈瘤とは?
- 動脈壁の一部が拡張し、こぶ状になったのもです。
- 破裂しなければ、通常は無症状です。
- 破裂するとくも膜下出血になります。
くも膜下出血とは?
- 脳動脈瘤などが破裂し、脳の周辺(くも膜下腔)が血液で 満たされた状態です。
- 突然死の原因となることもあり、全体で約半数の方が発症 後30日以内にお亡くなりになっています。
- 生存できた場合でも、意識障害、認知症、運動・感覚障害、 失語症などいろいろな後遺症が残ることがあります。
未破裂脳動脈瘤の破裂危険因子
- 大きいもの、不整形なもの(娘瘤、多房性)
- 部位(後頭蓋窩、内頸動脈・後交通動脈分岐部など)
- 症候性脳動脈瘤
- 多発性脳動脈瘤
- 破裂脳動脈瘤に合併した未破裂脳動脈瘤
- 喫煙、高血圧、多量飲酒
- 経過観察中に増大するもの
破裂率
- 正確には不明です。
- 1年間で1%前後と考えられています。
動脈瘤の増大率
増大率は年月の経過と共に高まります。1年目2.5%、2年目8%、3年目17.6%との報告があります。
増大しやすい条件
- 前交通動脈瘤
- 脳底動脈瘤
- 大きいもの
- 形の悪いもの
未破裂脳動脈瘤
余命が10~15年以上ある場合に、下記の病変に対して治療を検討することが推奨されています。
5~7mm以上の未破裂脳動脈瘤
5mm未満の未破裂脳動脈瘤でも下記のような病変には治療の検討を推奨
- 症候性脳動脈瘤
- 後方循環、前交通動脈および内頸動脈ー後交通動脈分岐部に存在する動脈瘤
- 嚢胞状、不整形、娘瘤(ブレブ)を有するなど形態的特徴を持つ 脳動脈瘤
未破裂脳動脈瘤の治療
開頭手術と血管内手術の2種類があります。
当院は専門医によりどちらの治療も行っています。
どちらの治療がよいか?
動脈瘤の部位、形態、大きさ、患者さんの全身 状態、年齢、既往歴等を総合的に検討し、より 確実で安全と思われる治療法を選択します。
一般的に、非常に小さいもの、動脈瘤の起始部 (ネック)が広いもの、中大脳動脈瘤は、血管 内手術は困難なことが多いです。治療の確実性と安全性が同程度と判断されれば、 血管内手術をお勧めしています。
開頭手術(ネッククリッピング)
- 顕微鏡直視下に治療を行う
- 末梢の細い血管の治療も可能である
- 術中破裂時の対処がより確実である
- 形状に応じた処置が可能であり、動脈瘤の完全閉塞率が高い
- 術後の検査は比較的少ない
血管内手術
- 開頭をしないで動脈穿刺のみで治療が可能である
- 手術で到達しにくいところでも治療が可能である
- 複数の動脈瘤を一回の穿刺で行える
- 再発率が開頭手術よりは高いので術後の定期的な検査入院を要する
術後経過観察について
新たな動脈瘤に対する注意
- 年間0.2~1.6%で新たな動脈瘤が形成されます。
- 高齢者、女性、喫煙者、高血圧患者、多発性動脈瘤患者に新たな動脈瘤が形成されやすいと報告されています。
開頭クリッピング術
- MRIを毎年、5年後にDSAを行い定期的な経過観察を行うことをお勧めしています。
- 術中あるいは術後評価で明らかに頚部が残存したものは一年毎に3D-CTAまたはDSAを行っています。
- 新生動脈瘤の破裂が治療後10年間で1.4%に認めたと報告されています。
コイル塞栓術
- 54%~91%の完全閉塞率と報告されています。
- 手術から半年後、1年半、2年半後にDSAを行います。
当院の未破裂脳動脈瘤の治療予後
一般に重篤の合併症5%、死亡率1~2%と報告されています。
当院の過去10年間(2001~2010)の治療成績
転帰 | 開頭手術 | 血管内手術 | 計 |
無症状 | 97 | 74 | 171 |
後遺症 | 4 | 4 | 8 |
死亡 | 0 | 0 | 0 |
計 | 101 | 78 | 179 |
当院の未破裂脳動脈瘤の治療状況(2011)
- 平成22年の1年間で当院では187人の方に未破裂 脳動脈瘤が新たに発見されました。
- 平成23年1月の時点で計1016人の患者さんが未破 裂脳動脈瘤で受診されました。
- 未破裂脳動脈瘤の患者さんのうち、約15%の方が 治療を受け、85%の方が経過観察しています。
- 経過観察中の16人の方の動脈瘤が破裂し、くも膜 下出血を発症してしまいました。
経過観察中の注意事項
- 突然の激しい頭痛が発生したときはすぐに救急車で病院を受診して下さい。
- 破裂予防のため急激な血圧上昇を避けてください。(高血圧と診断されていなくても、急に寒いところに行ったり、疼痛や感情の起伏でも血圧は上がります。便秘を避け、激しくいきまないでください。)
- 喫煙、過度の飲酒は破裂の危険因子です。
- 定期的にMRIによる経過観察をしてください。(初めは3~6ヶ月後、その後は1年毎に)
- 説明を受け精神的な不安が強く、食欲不振、不眠症などが発症した場合は、ご連絡下さい。
最後に
未破裂脳動脈瘤の治療は無症状の患者さんに危険を伴う医療行為を行うものであり、治療を受けるか経過観察するかの判断には特に慎重を要します。
当院では、可能な限り動脈瘤についての情報を提供し、最も患者さんにとって安全と思われる治療方針をお勧めしております。
治療方針は、患者さんのご希望を尊重し最終的にはご本人とご家族の方の同意をもって決めます。
治療方針は、患者さんの精神状態、動脈瘤の変化により変更することがあります。