第10回梶川病院主催 知っておきたい高齢者のフレイルの講演会開催しました
知っておきたい 高齢者のフレイル
(講演)
2020年2月20日
医療法人翠清会 会長
翠清会梶川病院名誉院長
梶川 博
わが国の高齢化率(65歳以上の高齢者比率)は、2015年には26.7%(4人に1人)となり、今後も増加し続けて2025年30.3%、2035年33.4%(3人に1人)となると推計されています。人生は100年時代と言われています。100年の人生を見据えて、如何にして健康寿命を伸ばすかが、これからの問題です。
フレイル(frailty)は「虚弱」とか「脆弱」と訳されていましたが、日本老年医学会が「フレイル」と正式に提唱しました。フレイルは、健康と要支援・要介護の中間の位置づけで、介護が必要になる一歩手前の状態です(図1)。ここで重要なのは、フレイルの段階では健康に逆戻りが可能です。
図1 フレイルの位置づけ
人の健康度は加齢・疾患・ストレスなどによって損なわれていきます。フレイルから健康にもどるのは可能ですが、要支援・要介護になってしまうとフレイルにもどるのは困難となります。
高齢者が長く健全に生きていくために、3つの健康
1)身体的健康:環境が変わっても「身体的恒常性」を保つ力
2) 精神・心理的健康:困難に直面したときにそれを理解、対処して 意味を見出せるという力(「コーピング」)
3)社会的健康:自立して、生活をマネジメントする力が必要です。
これら3つの健康がそれぞれ虚弱になると、身体的フレイル、精神・心理的フレイル、社会的フレイルとなります。人によって原因が異なったり、二重三重に原因が重なっていたりしますので、順番をつけるのは困難といえます。
身体的フレイルには、栄養障害、転倒、誤嚥、ロコモ(運動器症候群)、サルコペニア(筋肉減少症)などがあります。精神・心理的フレイルには、うつ、エムシーアイ(軽度認知障害/MCI:Mild Cognitive Impairment)などがあります。これらに加え、社会的フレイルとして社会的要因(孤独・閉じこもり・貧困など)が重なることになります(図2)。
図2 フレイルの多面性と相互関係
健康寿命を短縮するフレイルの3要因の1つの要因が生じると、他の要因をも誘発する可能性を示しています。これをフレイルの悪循環といいます。
後期高齢者(75歳以上)は加齢とともにフレイルとなりやすい状態となり、ついには身体機能の障害を来して、介護の必要な状態となりますが、フレイルの時期をなるべく回復、あるいは維持して健康寿命を長く維持することが肝要です。フレイルはそれがまだ可能な状態なのです。そこで、2020年4月より厚生労働省は75歳以上に健康寿命を延ばし、介護サービスが必要となる手前で食い止めるフレイル健診を実施することにしました(図3)
図3 2020年度よりフレイル健診開始
15問からなる質問票を導入。固いものを食べにくくなったか、この1年間に転んだことがあるか、週に1回以上外出しているか、など「食事」「運動」「社会参加」の3本柱を呼びかけています。
(記録:医療法人翠清会 介護老人保健施設 施設長 梶川咸子)
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