1.髄膜腫とは?
髄膜腫は脳腫瘍の中では最も頻度が高く(100 万人の人口に対して年間20 人程度に発生)女性に多い腫瘍です。ほとんどが良性の腫瘍です。すなわち大き くなるスピードが遅く、転移することも少ないということです。脳の表面を覆う硬 膜と呼ばれる膜に発生し、脳と頭蓋骨の間で脳を圧迫しながら大きくなります。
2.症状は?
腫瘍ができる場所によって異なります。小さい場合は無症状のことが多いです が、CT やMRI などの検査機器の普及により脳ドックや頭部外傷などで検査を行う機会が増えたため、無症状で偶然発見されることも多くなっています。腫瘍が 大きくなるにつれて脳を圧迫するなどで症状が出現します。症状としては以下の ようなものがあります。
①頭痛、吐き気、嘔吐 :腫瘍が大きくなると脳の圧迫が強くなり、脳圧が上がるために出現する症状です。特に起床時に症状が強いのが特徴です。
②痙攣発作:髄膜腫では他の脳腫瘍と比べても痙攣発作で発症することも多いようです。
③脳の機能障害による症状:腫瘍で圧迫を受けた脳組織の機能が低下しておこる症状です。腫瘍の発生部位により障害を受ける脳の部位も異なるため症状も様々です。手足の麻痺や歩行障害、感覚障害、言語障害などが多いですが、場所によってはめまいやふらつき、難聴、視力障害や視野欠損、ものが二重に見えるなどの症状が出ることもあります。物忘れなどの認知症のような症状を生じることもあります。
3.診断方法は?
よほど小さいものでない限り、頭部CTやMRIで診断できます。造影剤という診断用の薬を使うことでよりはっきりと脳と区別することができます。
4.治療は?
手術摘出により治癒が可能な脳腫瘍のひとつですが、手術による死亡を含めた合併症も少ないながら存在し ます。症状がない場合は手術をせずに様子を見ることが推奨されていますがいまだ議論のあるところです。それは髄膜腫の自然経過(どのぐらいの早さで大きくなるのかなど)はいまだ明らかにされていない(個々の患者により大きく異なる)ため、長期間大きくならず無症状のままで治療を必要としない方もいれば、比較的短期間で大きくなり症状を出す方もいます。腫瘍が大きくなって症状が出てからでは手術による合併症の危険性は上がります。また、部位によっては手術ができないような場合もあります。したがって、それぞれの患者様で個別に慎重に検討して決めていく必要があります。